その後、あれよあれよという間に引っ越しと同居の手続きが進んだ。

どういう訳か両家の両親にはまったく反対されなかった。

親がとやかく言う年齢でもないし、どのみち入籍するんだからお互いの価値感を知るいい機会だ、なんて逆に勧められたくらいだ。

現状は未婚だし同棲になると実両親に改めて訴えれば、反対されたいの?なんて呑気な回答が返ってきた。

私の両親は恋人との付き合い方に関してうるさく言うほうではなかったが、それでも節度のある付き合いをしなさいと学生時代から事あるごとに注意されていた。

それなのに今回はどうしてと訝しんで尋ねると、事前に櫂人さんから丁寧な説明があったという。

本当にあの人は一筋縄ではいかない。

わざわざ自宅まで来て真摯に願い出てくださったのよ、と母に言われて思わず頭を抱えた。


櫂人さんの予想通り、上田さんは私たちの仲を疑っているようで自身の母親を通じて方々から情報を仕入れているらしい。

きっと上田さんは私が想像する以上に彼を想っている。

しかも家柄もなにもかもが彼に相応しい。

上田さんに婚約者になってもらえばよかったのではと、ふと漏らした際には絶対零度のような冷え冷えとした目を彼から向けられた。

声も背筋が凍りつきそうなくらいに冷たかった。


『――お前は俺に不満があるのか?』


『不満とかではなくて、上田さんのほうがお似合いだと思うので……』


『俺の結婚相手はお前以外にいない。それ以上言うなら今すぐキスして黙らせるぞ?』


綺麗に口角を上げ、とんでもない脅し文句を突きつけられ慌てて黙ったのは苦い思い出だ。