時間は大分さかのぼるが。

 今朝、非常にラフに髪をまとめていたら、恵介に「だらしないなあ」と、毛先を軽く引っ張られた。

「やめてよ、結構痛いんだから」
「ごめんごめん。でもさ、最近のあずみ、どうしてそんなハンパな頭ばっかりなの?」
「ハンパとは?」
「前はさ、もっとこう、ラフだけど工夫した感じのお団子だったじゃん。あれめっちゃかわいくて…」
「あそこまでするのは結構手間かかるんだよ。いいじゃん、髪まとめてるだけでもマシって思ってよ」

 私はもともとショートヘアだったが、恵介が結婚前、「あずみはロングの方がもっと似合うと思うけどなあ」と言った後、試しに伸ばし出したら満更でもなく、ってな感じで、今の「背中の半分くらいのところ」のロングで落ち着いている。
 で、切ろうと思ったらいつでも切れるなんて思っていたら、コロナウイルスの蔓延で、美容院にも行きづらくなってしまった。 

「そうだけどさ…子供いるわけじゃないんだから、もっと自分に手をかけてもいいんじゃない?」
「…何それ?子供いない女は無造作ヘアも自由にできないわけ?」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて…」

 そこで黙るなよ!じゃ、どういう意味から説明しろよ!――と私も何となく言いづらい。

「…行ってきます」
「……行ってらっしゃい」

 今日は「お見送りのキス」はない。
 私はバイトが休みなので、家事をゆっくりやって、動画配信でめぼしい映画でも探してみるくらいしか予定がない。

 結婚4年目の記念日は「花婚式(はなこんしき)」というキラキラした名前がついていることは、少し前に調べて知った。
 今日がその花婚式なのに。