唐揚げを揚げながら恵介の帰りを待っていると、「ただいまあ」と言いながら、恵介は「これ、お土産」と花かごを渡してきた。

「これは?」
「あー、結婚記念日でしょ。アダチの自販機で買った。花の活きはイマイチだけど…」
 アダチというのは、恵介の通勤路にある生花店の名前だ。
 たしか営業時間は21時ぐらいまでだったけど、やはり今は繰り上げにしているようだ。
 その代わり、店の前にもともとあったブーケや花かごの自販機販売を充実させているという。自販機だからどうしても限界があるけれど。
 それでもバラ、トルコキキョウ、カスミソウなど、全体に白やピンクの淡い色彩が可憐でかわいい、素敵な花かごだった。

「…ありがとう」
「え?あずみ、泣かないでよ!来年はもっといいのを買って…」
「ううん、何でもうれしいよ。ていうか、恵介が忘れてなかったことが一番うれしいから」
「何か、俺の評価地味に低くね?」
「何をおっしゃる!」

 私は唐揚げを揚げながらつまみ食いしたことを忘れ、恵介に抱き着いてキスをした。

「…俺のメシ、唐揚げ1個多目にちょうだいね」
「あ、バレた?」

 今日これ以降の会話は、全て2人の照れ隠しで構成されそうだけど、こういううれし恥ずかしのくすぐったさは、本当に久しぶりかも。

「あ、そのヘアスタイルいいじゃん。これ――髪飾りにしてみたら?」
 恵介が花かごのスポンジ(オアシス)から、カスミソウを一房抜いて、私のお団子アレンジに挿した。
「いいじゃん。これも挿して…これも…そうだ。写真も撮っとくか?」
「やだ、恥ずかしいよ」
「自分の後頭部は見えないでしょ?記念だよ、記念」

 恵介、本当にありがとう。照れ隠しでもうれしいよ。

【了】

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