マリオネット★クライシス
幕間⑩ 六本木・路上~大型トラック・車内


「ねえねえさっきから一人だよね、よかったらうちらと遊びに行かない?」


ABCテレビの裏口付近。
街灯にもたれてユウを待っていたジェイは、面倒くさそうに視線を動かした。

「え、やばっ」
「マジイケメンなんですけど!」

鼻息荒く興奮する2人組女子を、冷ややかに眺める。

「この辺じゃ見かけないよねっ、どっから来たのー?」

同じようなメーキャップ、同じような服、同じような仕草……双子か。
うんざりしながら吐息をつく。

<そんな恰好してると、外国じゃ間違いなく娼婦だと思われるよ。着替えた方がいいんじゃない? ちなみにオレは恋人がいるから、たとえ君たちが娼婦でも必要ないけどね>

不機嫌なまま中国語でまくしたてると、相手はギョッと顔をひきつらせた。

「え、え、日本人じゃないのっ!? 何語っ? ……ちょっ、ミカ、どうしようっ」
「え、わかるわけないじゃんっ、行こっ……」

ソーリー、アニョハセヨー、とへらへら笑いながら手を振って離れて行く2人から、早々に冷めた視線を外した。

「中国語だっつの」

ナンパやセールス、鬱陶しい輩を追い払うには、この方法が手っ取り早い。
総じてアジア人は外国語に弱いから。


――そういうの、感じ悪いから止めた方がいいよ。

幼い声が聞こえた気がして、その愛しい響きを反芻するように黒い空を仰ぐ。

厚く垂れこめた雲からは、今にも雨粒が落ちてきそうだ。
ユウはまだ、戻ってこない。

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