マリオネット★クライシス
第2幕 「変装」

車窓越しに、赤色灯を灯して慌ただしく過ぎて行くパトカーが見えた。
猪熊さんが通報したのかもしれない。

勝手に離れちゃってよかったんだろうか。
あの男の人、大丈夫かな。

遠ざかっていくサイレンは気になるものの……もうジェイによってタクシーに押し込まれた今となっては、どうすることもできない。

仕方ないよね、とため息をつき反対側に目を移せば、黙々とスマホに文字を打ち込んでる彼がいる。誰かにメッセージを送ってるっぽい。

神様に贔屓されたとしか思えないその整った横顔からは何も読み取れなくて、段々焦ってくる。

なんか、流されてここまで来ちゃったけど……

――ユウのバージン、オレがもらう。

あれは、一体どういうつもり?
だってポイ捨てするなって先に止めたのは、彼の方なのに。

本気でわたしと……その、エッチする気?


さっき彼が運転手さんに指示した行先は、白金台だ。

かなりくわしく道順を説明してたし、初めての場所ではなさそうな感じ。
泊ってるホテルでもあるのかな。


――いいか、こいつはうちのタレントで、俺はマネージャーだ。

まさかとは思うけど、わたしが芸能界で仕事してること知って何か企んでる、なんてことないよね?

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