私は6歳になる少し前の5歳の4月、この街・F県片山(かたやま)市に引っ越してきた。
 
 もともと住んでいたのは、県内の80キロ離れた街だった。幼稚園の仲よしの子たちと別れるのは寂しかったことはよく覚えている。
 まだ字もまともに書けない年齢だし、家の電話は子供がさわっただけで「いたずらするな」と怒鳴られたような時代なので、家族ぐるみのお付き合いでもしてもらわなければ、もとの街の友達との縁など簡単に切れてしまう。
 最後の1年は、辛うじて空きがあった幼稚園に何とか入れてもらい、そこで無難に過ごした。

 近所には、別のもっと近くの幼稚園に行っている同じぐらいの子たちがいたけれど、あまり遊ばなかった。遊んでも趣味というかノリが合わないなと幼心に感じたので、幼稚園が一緒だったとしても、友達といえるほどの仲よしにはなっていなかったかもしれない。