私たちは、誰の家のお墓かも分からないところで、石でできたベンチのようなところに腰掛け、空を見上げた。
 墓石には名前が彫ってあるが、漢字は数字の「一」とか「二」とか、「川」みたいな字しかまだ読めなかったので、「何て書いてあるの?」とユウちゃんに尋ねた。
 2年生になったばかりだというユウちゃんも、「石」とか「上」とか簡単な字しか分からなかったようだ。

「おせんべ、おいしかった」
「兄ちゃんだったら、もっとおいしい菓子持ってんだけどなあ」
「ユウちゃん、お兄ちゃんいるの?」
「そうだよ。チビは?」
「いない」
「お姉ちゃんは?」
「いないよ」
「じゃ、ヒトリッコか」
 聞いたことがある言葉だったので、「うん、それ」と答えた。
 きょうだいがいないと言うと、「寂しくない?」って言われることがあったけど、ユウちゃんは「おやつひとり占めだな」ってうらやましそうだった。

「お兄ちゃんはお菓子くれないの?」
「キゲンいいときはくれるけど。勝手に食べようとしたら殴られた」
「そうなんだ」
「兄ちゃんはマンビキっていうやつで、お菓子持ってくるんだ」
「マンビキって?」
「お店の人に見つかんないように持ってくるんだって。
父ちゃんこづかいくれないけど、それで新しい菓子とか持ってきてる」
「そんなことしていいの?」
「見つかんなきゃいいんだって兄ちゃん言ってた。お前はガキだから見つかるからダメって」