12月某日。
 私とハルカ、ナツキの3人はクリスマスコンサートに行くことになっていた。プラネタリウムで開かれるもので、クラシックからポップスまで幅広い演目が発表になっていたし、星が好きなハルカも、音楽が好きなナツキも楽しみにしていた。

 というのは陽動作戦(おもてむき)

 夫は年末は休日出勤が当たり前になる。かなりギリギリではあったが、「その日」に合わせてフレキシブルに対応してくれる引っ越し業者を探し、こっそり手配した。

「パパはお仕事なのに、いいご身分だな、お姫様方」
 夫はそう言いながら、ナツキの小さな鼻をつまんでからかった。いつもなら嫌そうな顔をするナツキも、「えへへ」と笑うだけだった。
 ハルカの顔をちらっと見ると、一応笑ってはいるが、少し緊張が見られる。

 行先は親戚が持っている小さな一軒家で、少し田舎なので、今のお友達とは会いにくくなるし、学校も転校になる。私の都合でそんな状況を作ってしまったことは心苦しいが、かといって、娘を置いて逃げる気はなかった。

「パパ、ご苦労様です。行ってらっしゃい」
 ハルカにそう言われた夫は、「お前たちも楽しんでおいで」と極上の笑みを残し、上機嫌で家を出ていった。

 朝一のコーヒーはきちんとドリップし、食後の緑茶も丁寧に急須で淹れた。

 みそ汁、だし巻きの味、卯の花、鮭の皮の焼け具合、ホウレンソウのお浸し、浅漬け。
 休日出勤ということで、時間にゆとりがありそうだったので、デザートにリンゴもむいた。
 
 最後に理想的な家族の朝をショーアップできたかな?