私は自慢できるほど賢くはないが、かといって、自分に男を見る目がなかったとまでは思わない。

 夫は最初から“そういう”だったわけではない。全力で騙しにきた者に騙されただけだ。

 新婚当時は、神経質なところや細かいこだわりが気になるものの、今ほどのエキセントリックさはなかった。
 そして上品で優しいご両親と、彼とよく似た2歳年上の義兄。
 やや干渉気味ではあるものの、「よくしてくださっている」し、好印象を持っていた。大抵の女なら、ごく普通に良縁に恵まれたと思うだろう。

 私は仕事を続ける気だったが、早いうちに子供をもうけ、手がかからなくなったら再就職すればいいと、結婚とともに退職を勧められた。

「君はしっかり者で頭がいいからこそ、母親業に専念してほしいんだ」
「復職に有利になるスキルアップをしたいなら、協力するよ」

 この二つにころっと騙された。
 双方の実家がなまじ裕福だったこともあり、良くも悪くもガツガツできなかったし、このご時世、そういう人生も選択できる自分は幸せなのだと思わざるを得なかった。

 夫はいずれ家業を手伝う前提で、義父と縁のある企業で働いていた。超高給というわけではないが、夫の実家からの引き立てがあり、かなりゆったりと暮らせるし、若いうちに持ち家に住むこともできた。