幼なじみにつきまとわれています
♯3 乃々の近くにいるワケ
【拓海side】
「ある人って……?」
「うん。乃々ちゃんの……お父さん」
乃々ちゃんに聞かれて、俺は答える。
「わたしの……パパ?」
乃々ちゃんが目を見開く。
驚いた顔も、本当に可愛い。
「そうだよ」
俺は頷き、晴れ渡る空を見上げた。
俺が、いつも乃々ちゃんの近くにいる理由。
今から4年前に若くして病気で亡くなった、乃々ちゃんのお父さんと……約束したから。
…────あれは、俺と乃々ちゃんが小学6年生のとき。
俺の父親と乃々ちゃんのお父さんは幼なじみで、仲が良かったから。
俺らが赤ん坊の頃からずっと、家族ぐるみの付き合いをしてきた。
乃々ちゃんとふたりで、家の近くの病院に入院しているおじさんのお見舞いに行くことも何度かあった。
あの日も……そうだった。
日差しが照りつけ、今みたいに暑い暑い夏だった。
『パパとたっくん! 乃々、花瓶に水を入れてくるねー!』
乃々ちゃんが、お見舞いに持ってきたピンクのガーベラの花を生けるため、花瓶を持って病室を出た。
狭い個室には、俺とおじさんのふたりきりになった。