コンチェルトⅡ ~沙織の章
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小学生になった翔は 日に日に 逞しくなっていく。

バス通学にも 慣れて 毎日 楽しそうに 学校から帰ってくる。


樹は どんどん お兄ちゃんらしく 落ち着いてくる。

子供達の成長は 沙織の 大きな自信になっていた。
 


男の子二人の 子育てなのに 沙織は 苦労を感じたことが無い。


二人は 思いもよらない いたずらをして 沙織を 驚かすことは あったけれど。


悪意のない いたずらに 沙織は 叱るより先に 笑ってしまう。
 


そして 二人とも 穏やかで 思いやりのある 男の子だった。


家族思いで 絵里加や壮馬にも 優しく接する。


紀之は 子供達に 色々なことを 教えてくれるから。

優しさ、思いやり、そして明るさ。
 

笑顔が 大好きな紀之だから。


いつも 明るく笑っている家庭が どんなに安らぐか。


みんなが 笑顔だから 子供達も いつも 伸び伸びしていられた。
 


子供達の成長は 紀之の成長でもあった。


最近の紀之は 父親らしい貫禄が出て とても頼りになる。


会社でも 人望ができて お父様も 安心して見ているようだった。


「沙織ちゃんのおかげよ。」

お父様が 紀之を褒めると お母様は 沙織にそう言う。
 

「いいえ。お父様とお母様が 良くして下さるからです。」

沙織は 慌てて首を振る。


そんな様子を お母様は 嬉しそうに 見つめてくれた。


心に余裕があるから 沙織は どんどん優しくなっていく。

結婚してからの家庭が 沙織を 育てているから。


生まれ育った家庭では 知らなかったことを お父様とお母様 そして 紀之と子供達が 教えてくれる。
 

「最近の沙織 お袋に似てきたよ。俺、怖くて。」

紀之が 冗談っぽく 沙織に言う。
 

「嬉しいわ。私 お母様みたいに なりたいんだもの。」

沙織が 明るく答えると 
 

「やめてよ。」

と紀之は 笑う。


紀之が 安心し 喜んでいることを 


沙織は 気付いていた。
 
 











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