コンチェルトⅡ ~沙織の章
14

結婚して 何年も経つのに 沙織は 紀之が好きだった。


付き合っていた頃と 同じように 紀之に 惹かれていた。


大らかな明るさ。

優しい思いやり。


一緒にいる時間が 増える程 紀之を 好きになった。


家族として 紀之の 人間性の素晴らしさを 尊敬する以上に

紀之を 男性として 愛していた。


紀之は いつも沙織を 女性として 扱ってくれたから。
 


照れ屋の紀之は 人前では 沙織に 素っ気なく接する。

そんな時 チラッと すまなそうに 沙織を見る紀之。


その視線だけで 沙織は 十分な愛を 感じられた。
 

紀之は 二人きりになると 甘く 沙織を 抱き寄せる。

無言のまま 抱きしめられて 紀之の ぬくもりを感じる時


沙織は 自分が 紀之を愛していると 強く思う。
 

40才が近付いた紀之は 貫禄と落ち着きを 身に付けて 一層 沙織を惹きつける。


そして 紀之に 惹かれるほどに 沙織も 艶やかに 美しくなっていった。
 


廣澤家の男性は 奥様を 輝かせ続ける。

紀之だけでなく お父様も智之も。


お母様は ずっと若々しく美しい。

麻有子も 結婚してから 更に 綺麗になっていた。
 

愛し、愛されている 自信と充実感。

それが 心の余裕になる。


だから みんなに 優しくできる。

そして みんなが 愛され続ける 努力を惜しまない。


心も体も どんどん 豊かになっていく。
 


沙織が お父様とお母様のような 夫婦でいたいと思うように

いつか 樹と翔も 紀之と沙織のような 夫婦を目指してほしい。


沙織は いつも そう思っていた。
 
 












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