コンチェルトⅡ ~沙織の章
18

数日後 たまたま リビングで 沙織は 翔と二人きりになった。
 

「ねえ、翔。どうして お医者様に なりたいと思ったの?」

沙織は 思い切って 翔に問いかけた。


翔は 一瞬 照れた顔をして
 

「お父さんの会社で 作っている物 社会の 役に立っているでしょう。俺も 誰かの 役に立ちたいから。」

と言った。
 

「それで医師に?お父さんの会社で 働くことで 役に立とうとは 思わなかったの?」

翔は 利発で 物のわかる子だから

沙織は 一歩踏み込んで 聞いてみる。
 

「お父さん すごいでしょう。あんなに 大勢の社員が お父さんに 付いて来てくれるんだよ。俺、お父さんみたいな 力はないから。自分のできる事で 頑張ろうと思って。」

翔は素直に答える。
 

「翔、理系が強いものね。でも医師になるって 大変な道のりよ。」

沙織は 翔の言葉に 感動していた。


翔は 紀之を尊敬している。

難しい年頃の 男の子なのに。


素直に それを言える 家族であることも 沙織は嬉しかった。
 

「お祖父様も 言っていたでしょう。医師も社長も 同じくらい大変だって。同じ努力するなら 自分に 向いている道の方が いいと思ったから。」

翔の言葉に 沙織は 笑顔で頷いた。
 

「翔 お医者様になったら、お母さんの病気は 絶対に治してよ。」

沙織が 強く言うと、
 
「無理だよ。医師は 神様じゃないんだからね。」

と翔は 声を出して笑った。
 

「そうか。そうだよね。」

と沙織も 一緒に笑ってしまう。
 










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