奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~



***



奏は梨音と別れてから虚しい日々が続いている。
もう夏だというのに、梨音の行方にはなんの手掛かりもない。

(まだ見つからない)

奏は焦っていた。
元々、梨音には頼れる親戚はいないし、幼い頃からピアノばかり弾いていたから友人も少ない。
それに高校3年生になってからは自分がマンションに囲い込んでいたのだ。
どこを探せばいいのかさえ、奏にはわからない。

(どこに行ってしまったんだ)

奏は今、梨音を酷い言葉で追い出してしまった罰を受けていると感じている。
秘書の守屋などは、最悪の事態を考えて警察に捜索願を出したほうがいいのでは言いだしたくらいだ。

あれこれ考えていたら、夜も眠れない。
なんとか仕事に支障をきたさないよう注意しているが、どうしても疲労は溜まってくる。
奏は少し痩せてしまったし、顔色もあまりよくはなかった。

(酷いざまだな)


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