クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
*9



どんなに嘘をついても、強がっても、やっぱり心の奥底では彼への想いが消えない。

今でも、由岐先生のことが好き。

そう気づいたら、胸の中に彼への想いがとめどなく溢れた。



つりあわなくなって、ふさわしくなくたって、そばにいたい。

そう、強く願ってしまう。






ある日の仕事中。

私はパソコンを目の前に、ぼんやりと上の空だ。



仕事に集中しなければいけない、そうわかっていても先日の由岐先生とのことが頭の中を占める。

由岐先生の肌の感触、指先の優しさ、溺れるほどのキス。全てはっきりと覚えている。



『……美浜、好きだ』



あれは、本当の気持ちだったのかな。

同情ではなく、彼の気持ちが込められた行為だと思ってもいいのかな。



「……荻、荻ってば!」

「わっ!」



すると、鏡花ちゃんの大きな声にはっと我に返った。



「なにボーッとしてるの、さっきから何度も呼んでるのに」

「ご、ごめん……」

「もう、しっかりしてよ。今のうちにゴミ捨てお願いしてもいい?」

「うん、いってきます」



呆れ顔の鏡花ちゃんに謝りながら、私は事務所のごみを袋にまとめて、病院裏の収集場まで持って行くべく小児科病棟を出た。


  
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