~狂恋~夫は妻を囲う
「昨日は悪かった」
「どうしたの~?急にしおらしくなっちゃって……!」
次の日、洋武が魁聖の事務所に謝りに来た。

「彩羽の為だ」
「あ、そう」
「だから、今まで通り彩羽に会わせてくれ」
「うーん。いいけど、一つ言っとくね!」
「は?」
「何を企んでも、上手くいかないよ!」
「なんだよ、それ」
「んー?洋武が何か企んでるのが手に取るようにわかるから!」
「魁聖…お前……!」
「フフ…無理だからね!俺から彩羽を引き離すなんて…!
あと、賢い洋武でいてね!」

「………あぁ、わかってる」

洋武は静かに答えた。
そして帰ろうと、ドアに向かう。
「じゃあ…」
社長室を出て、後ろ手にドアを閉めた。
「そんなことはわかってる。
でも、俺はまだ諦めてない。
絶対に……彩羽をお前から、解放する。
死神から、彩羽を………」
静かに呟いた、洋武だった。


「フフ…ほんっと、分かりやすっ!」
洋武が出ていったドアを見ながら笑う魁聖。
「社長」
「何~?」
「今回の洋武さんは、本気みたいでしたね」
「そうだね~」
「何かこちらも対策をとっておくべきでは?」
「そうだね。
まぁでも、無理だよ。俺から彩羽を引き離すの。
洋武は優しすぎるから」
「は?」
「洋武が若頭をやっていけるのは、俺がいるからだよ。アイツ一人じゃ無理だよ!
洋武には決定的に足りないモノがあるから。
それがないと、若頭をやってけないし俺から彩羽を奪えない。
まぁ…その前に手は打つけど……!」
魁聖は頬杖をついて、ずっとドアを見つめていた。
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