白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

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   * * *


「怪盗が仕掛けた落とし穴に落ちた、って……ウィルバーさまがちゃんと前を見ていないからですよ?」
「ローザ、お前まであの女狐みたいなこと言うんだな」
「?」

 ラヴェンダー色のネグリジェを無防備に着たまま玄関まで降りてきたローザベル・スワンレイクは明け方に満身創痍で戻ってきた夫の姿を見て呆れている。
 ウィルバーは情けない気持ちになりながら、応接室のソファに座って昨晩の顛末を愛する妻に報告する。
 スワンレイク王国の憲兵団を束ねる長であるウィルバーのさいきんの頭痛の種が国を騒がす女怪盗アプリコット・ムーンなのだ。
 つねに機敏な動きで憲兵たちを挑発し、さんざんコケにしてから盗みを行うという人騒がせな姿から、一部では“女狐”などと揶揄されている怪盗。ウィルバーの天敵でもあり、生来おっとりした妻のローザベルと比べたら、まったく女性らしいところのないがさつな人間らしい。

 ふーん、と寝ぼけたまま夫の話を隣で耳にしているローザベルを見て、ウィルバーは苦笑を浮かべる。
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