思い出したらきりがないが、一番突拍子も無いものは交換日記だろう。
 夢の中の少女達に憧れて、家族で交換日記をするなんて非常識過ぎて恥ずかしい。

 けれどそのお陰で、アイスフェルト公爵家が仲良くなれたのは事実だった。

 乙女ゲームでは宰相という立場にあるお父様は『エミリア』を切り捨て、審議会を開くことはなかったけれど、現在の家族を溺愛しているお父様であれば……どうにかして、私の冤罪を晴らしてくれるはず。

 この危機を脱して無事生還できれば、乙女ゲーム内での『悪役令嬢』の役割から解放されて、今度こそヒロインにも攻略対象者にも邪魔されない……〝私〟の、本当の人生が待っているに違いない。

 そんな淡すぎる一縷の望みを抱きながら、私は涙が浮かぶ目を閉じた。