「こんなものばかり食べていても、兄上の体のためにならない。菜食主義など、僕たちには向いてないんです」

 純白のテーブルクロスが掛けられたテーブルの上へ、クラウスが振りかざした手を付いた瞬間、ガチャンッと食器が揺れる。

 彼はなにも、二人だけのために用意された宮廷のシェフが腕によりをかけて作った料理を〝こんなもの〟と表現したわけではない。
 古代種にはもともと肉や魚や野菜といった『人間の食事自体が向いていない』のだと、そう言いたかった。

「兄上のその症状が発症したのは二百歳を超えてからだ。きっと成人してからの魔力が、体と馴染んでいないんです。
 二百歳を越えれば、人間を食べてもいい決まりでしょう? いい加減、菜食主義はもうやめて下さい。迷惑なんです。心配する僕の身にもなってください」

 十六歳ほどの見た目をした眉目秀麗な少年はそう言って、「兄上も、父上も、大嫌いだ」と唇を噛む。

 ディートリヒとクラウスの父である前皇帝は約六十年前に、古代種の帝王にのみ現れる不治の病によって亡くなっている。