【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
⑱父親としての自覚
【爽太Side】




「……親父、親父に話したいことがあるんだ」

 俺はその数日後、紅音には内緒で実家に来ていた。

「話?なんだ」

 親父には、紅音のことを話さなければならないと思った。
 ちゃんと妊娠していることを、話す義務が俺にはあるから……。

「紅音が、妊娠したんだ。……俺の子だ」

「…………。そうか」

 親父はてっきり、怒るかと思っていた。だけど口を開いても、言ったのはその一言だけだった。

「……すまない。約束を破った」

 親父と約束した、子供は作らないと。……なのにその約束を、俺は破ってしまった。

「……そうだな。破ってしまったようだな、約束」

「すまない」
 
 謝って許してもらえるかは分からないが、とにかく謝った。

「……まぁ、出来てしまったものは仕方ないからな。責める訳にはいかないな」

「怒らないのか……?」

 と俺が問いかけると、俺はこう言ってきた。

「怒る訳はないだろう。……ただもし、お前たちに子供が出来たら、お前はウィーンには行かないと言い出すのではないかとは……思っていたがな」

「……親父」
< 171 / 208 >

この作品をシェア

pagetop