あなたに寄り添うウェディング・セレネの寿でございます。

披露宴にピアノは十八番

赤い番傘が立てられました
間から、庭園の緑が
美しく見える和風ガーデン。

お色直しを
済まされた新郎新婦様を
迎え
立食披露宴は
入園のご挨拶から
シャンパンタワー乾杯、
オリエンタルケーキの入刀、
ファーストバイト

滞りなく進められております。

ナカヤマ様の面持ちを、
どこか
心配げにされる新婦様の
雰囲気も、
番傘の日差しで上手く
かくせましたから。

わたくし寿!ナイス演出ですわ!

「大変、色打掛もお似合いで
ございますよ。さ、こちらへ、
お直しの、お振り袖へと変え
まして軽くいたしましょう。」

丁度、外注演出をしました
舞妓さんの踊りが
三味線と音から始まりますと、

2度目のお色直しで、
休憩に新郎新婦様をお連れします

「あ、はい。寿さん、あの、」

新郎の腕にしっかりと
身を寄せながら、新婦様が
わたくしに 声をかけられますが
そのお顔に浮く汗を
ハンカチで白粉に気を付けて
吸わせて、

「ナカヤマ様。
いかがなさいましたか?
これから、お色直しにお二人は
退出させて頂きますので、」

後ろに立つ
ナカヤマ様に、問い掛けます。

「少し、話をさせて下さい。」

赤い番傘で
廻廊への退出口を
然り気無く目隠しする場所で
ございました。

そういえば
ナカヤマ様は、
先ほど

この後にある
友人余興、
新婦様の元会社同僚様かたの
ピアノコーラスでの
伴奏練習で、席を外して
おられましたね。

「えーっと、寿くん?お色直し
だよねって!あ、ナカヤマ様!」

あらあら、
課長。タイミング良いのか
悪いのか解らない残念な方ですし
何ですか!!
そのへなちょこ
ファイティングポーズ!!

「課長。ナカヤマ様は、どうやら
迷われたようですので、
会場にご案内をして「本当に!

その人と、結婚する
のか?って、だけ、聞きに」」

おっと。
ナカヤマ様、わたくしの
言葉に被せていらっしゃいますか

「あのー、ナカヤマ様。こちら
会場ですから、案内しますよ」

ああもう。
課長、言い方!!

それでも課長がナカヤマ様を
手で促してご案内します。

ナカヤマ様は
なんとも言えない
切なそうな顔をされますが、
ここは
わたくし寿が!っと
思いましたらば、

「ご、ごめんなさい!
ナカヤマ君。わたし、彼の事が
好きになったから、ナカヤマ君と
別れたの!会社も居ずらいって
思ってたら、彼が寿退社すれば
いいって、言ってくれて。
だから、わたしの心変わりなの。
わたしの勝手でごめんなさい。」

ナカヤマ様の方は
とても見れない
新婦様が、
ぶるぶると震えて
ナカヤマ様に謝られて
ございますっ。

わたくしは、
ここぞと
新郎に目を向けて頷きます。
そう!
新婦様を連れて行ってあげて
下さいまし!

「ナカヤマ君だよね。話は、
僕も彼女から聞いてるよ。悪い
けど、彼女の事は忘れくれない
かな。もう、彼女に君は、
必要ないみたいなんだよ。じゃ」

しっかり新婦様は
腰をホールドされて、控え室へと
新郎新婦連れ添い
歩かれます。

赤番傘に緑。
しつらえの滝が
ゴウゴウと音を立てて
流れてございます。

「ナカヤマ様。よろしいですか?
この後、ピアノもございますが」

わたくし、
肩を落とされる
ナカヤマ様に
フォロー
いたします。
これ大事、大事なところですよ。

「すいません、、大丈夫です。
ちゃんと、、弾きますから。」

頷いて、
わたくしは課長にナカヤマ様を
会場にご案内して頂きました。

その後にございます
新婦様の元会社同僚'sによります
ピアノコーラス。

なんとも
面映ゆい出来でございましたし。
なにより
ナカヤマ様、
新婦様への思いを、
伴奏に乗せての
やりきった感満載ですのに、

「あー、ナカヤマ様、
行っちゃったけどー。」

「課長、、」

言い方、、ですわ。

とにかく
新婦様と、目が合った瞬間
余興終わりの一礼と共に
脱兎の如く
出て行かれてしまいました。

しかも、

「ナカヤマ君!
どうしたの!待って。」

極めつけともいいましょうか。
同僚'sコーラスの
メインボーカル女子さんが
追いかけられましたわ。

なるほど、
新婦様がお仕事されていた時に
1番仲が良かったと
伺ってました方ですね、きっと。
それに、、
立食形式で正解でしたわね。

「こちら、寿。ナカヤマ様と1名
退場されました。ドア対応
お願いします。残りの同僚様へ
サービスフォロー願います。」

インカムでスタッフに
アナウンスをします。
これも
想定内ではございますから。

「寿さん、俺、ナカヤマ様、
暴れるとかさ、拐っちゃうとか
するかなーって思ったよ。」

課長、ネクタイを
今緩めますか?ダメですよね?

「映画みたいな事を、
そうそう、人生で一度きりの
大舞台でする覚悟は誰しもが
持つわけではございません。」

わたくしは、
眼鏡のツルを片手で整え、
課長にそう申し上げます。

「それを、寿さんが言っちゃう」

課長はすでに
だらしなくした襟元で、
ポケットに手を突っ込み
わたくしにいいますから、

「課長、いくらなんでも、
緩み過ぎてございますよ。」

新婦様が、
赤い番傘の下、

両親に感謝の言葉を贈る
という
ラストセレモニーを
こなされているのを
少しだけ
ブルーな眼差しで見守りつつ

課長に釘をさして
おきまして、

披露宴も無事に終えたので
ございます。

さて、最後の締めでございます。

< 3 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop