仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う

すべては仰せのままに

パッカパッカと小気味よいリズムで蹄の音とカラカラカラカラと車輪が回る音がする。
フローラは窓から顔を出し亜麻色のウェーブがかった長い髪を押え興奮気味に叫ぶ。
「宮殿が見えて来たわ!」
「フローラ、やめなさいはしたない」
「いいじゃない!誰も気にも留めてないわ」
浮かれている娘に深いため息を吐く男性は彼女の父親。
フィリップ アーゲイド男爵はこれから初めて会う娘の婚約者のことを思うと気が重い。
(あの、氷の仮面の貴公子とわが娘フローラが結婚……)
それを思い浮かべてフィリップはまた深いため息が零れる。
娘を溺愛している父としてはあまり喜べない縁談を持ち込んだのはこの国の頂点、ジェイド・リアム・オブシディアン皇帝陛下だ。

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