仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「は?」
「マリーが男に声を掛けて隙を作り、お前が攫って行った後追いかけようとした男を呼び止め阻止したのは私だぞ?どうだいいアシストだっただろう?」
「なっ!あれも?」
「私たちが居なければ今頃フロ、いや、ユリシスはほかの男と結ばれていたはずだ。感謝されこそすれ文句を言われるとはなあ」
あの一瞬のチャンスがなければ声を掛けるタイミングを見失いユーリスはフローラとは気づかずにすれ違うところだったかもしれない。
そう思えば皇帝のおせっかいもたまには役に立つのだと思うのだけど……ふんぞり返りどや顔をする皇帝に素直にお礼を言うのはなんだか癪だ。
「あなたがチャンスをくれたおかげで私は大切な人を見失わずに済みました。感謝いたしますマリーベル皇妃」
ユーリスは皇帝を無視して皇妃に向かい頭を下げた。それには皇帝もギョッとする。
「な!私への感謝は???」
ちょっとちょっと!と皇帝は自分を指さしユーリスにアピールするもユーリスはつんとそっぽを向き無視を決め込む。
「感謝してますよ、悔しいけど」
「まあ、ふふふっ、やっぱり素直じゃないわねえ」
ぼそっと言ったユーリスの言葉は必至な皇帝には聞こえていなかったが、皇妃はしっかりその声を聞き取り、ふたりを見てくすくす笑った。
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