「だめだ私が許可しないぞ、ユーリスには関係ない」
「そうやって庇うと余計にユーリスに疑惑が向きますよ」
やっとユーリスは幸せを手にしようとしているのに、邪魔立てしようとするものが現れ苦虫をかみつぶす皇帝。だがしかし、ユーリスを遠ざけるつもりはない。弟のように思っているだけでなく、誰もが傅く皇帝といえど彼ほど有能で信頼できる男はそうそういないのだ。
スペンサー侯爵も皇帝と同じ意見ではあるが、如何せん、世間の疑惑は徐々にユーリスに向いているので何とかしないといけない。
「ユーリスはこのことは?」
「もちろん知っていますし、事実無根なのだから堂々と帝国警察の事情聴取も受けるといっています」
「しかし、事情聴取を受けたと知られれば増々世間はユーリスに疑念を抱く。やはり許可はできん」

(ユーリスの幸せをまた奪わせることなど看過できない)
皇帝はヒルト家が襲撃を受けた当時、皇太子という立場なりに犯人を探し出そうと動いていた。しかしなにも成果が出せずに自分はユーリスのそばにいてやることしかできなかったことを今でも後悔していた。あの頃はまだまだ力のない少年だった皇帝は悔しさをにじませ、今回こそはと真剣にユーリスを守る算段を考えた。