仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
そんなふたりを開いていたドアの隙間から見ていたベリルはそっとドアを閉め、目尻の涙を拭い後ろに控えていたマリアに振り返った。
「お茶のおかわりはいらないようだ。暫くおふたりをそっとしておこう」
「ふふっ、かしこまりました」
嬉しそうに笑ったマリアも瞳が潤んでいた。
「お茶はもったいないから私たちで頂こうか。みんなで休憩しよう」
「はい!」
いそいそと戻っていくマリアの後姿を見送ってベリルはほっと息を吐くと、胸に手を当て目を閉じると天国のユーリスの両親に報告をした。
「旦那さま、奥さま、ユーリスさまはようやく幸せを手に入れましたよ。もう心配はございません。これからも私がおふたりを見守りお仕えしますから」
ベリルはかの懐かしい人たちの笑顔を思い浮かべ、そっとその場を後にした。
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