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「ねえユーリス、素顔を見せて」
「何度言っても駄目ですよ。それより家庭教師の時間ではありませんか?今日は確か歴史についての授業だったと思いますが」
「それは、これから行く。それより、ユーリスの素顔が見たい。授業に遅れちゃうから早く見せて」
(そんな片手間のように言われても……)
呆れたユーリスは小さな紳士を思わず見下ろした。
しつこくユーリスの素顔を見たがっているのは将来この国を背負うレオンハルト皇太子殿下。
昔はユーリスのことを怖がり目の敵すら思って近づいて来やしなかったのに、後宮でフローラに告白をしてからというもの、それを見ていたレオンハルトはユーリスに興味を持ち、ことある毎にユーリスに纏わりついていた。
ときは、大物貴族のバリモア公爵が犯罪を犯し政界を退いたために貴族たちは大いに動揺し慌てふためき右往左往して早ひと月。そんな貴族たちを冷ややかに見ながらやっと正常な日常が送れるようになった今日この頃。
ユーリスもバリモア公爵の件に関わらないわけにはいかず事情聴取や取り調べでは耳を塞ぎたい事態もいろいろあったが、まあ終わったことだからもういい。
その後始末に忙殺され、やっと落ち着いて仕事ができるようになったのだが、付いて回るレオンハルトに少々辟易していた。