仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「時間がないのであれば授業を優先させてください。先生をお待たせするのはいけません」
「ユーリスがその仮面を取ってくれればすぐに行く」
なにを言っても引きそうにないレオンハルトにユーリスはため息をつき、彼の目線に合わせるように片膝をつき視線を合わせた。
「なぜそのように私の素顔を見たがるのですか?興味本位で見ても何も面白くありませんよ」
「興味本位なんかじゃない。父上が、僕の臣下になるお前のすべてを理解してやらないと信頼し合うことなどできないと言ったから、僕はお前の素顔が見たいんだ」
「陛下が、ですか?」
「そうだ、父上はいずれ僕が皇帝になったとききっとユーリスが良き理解者となり助けてくれると言ったんだ。そのためにも僕はお前の素顔を見ておかなくてはならない」
ただの興味本位だと思っていたが、齢八歳にして意外としっかりした考えだったことにユーリスは驚いた。
「僕は、お前の素顔を見て信頼し合えるか見極めたい」
「顔を見たぐらいでわかるとは思いませんが」
「それでも見たい、見せてくれ」
揺るがないレオンハルトの瞳をユーリスはじっと見た。
ユーリスの素顔を知る者は少ない。
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