仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
やっと反応したユーリスに皇帝はこれだけは聞き出したいと胡散臭そうに目を細める。
「ふ~ん、本当に泣かせてはいないのだな?」
「もちろんです」
「初夜も泣かせていないと言い切れるのか?あれは痛いと聞く。マリーだって初夜のときは痛くて涙を流していたぞ?」
「は……あ!?」
とんでもないことを言い出した皇帝にユーリスは思わず素っ頓狂な声が出た。
でも、確かにフローラも痛みで少し涙を流していたと思い出すと顔が熱くなって口元を押さえた。
「お?身に覚えがありそうだな? やっぱり泣かせたんだろう。どうだった初夜は? お前も初めてだったのだろう? ちゃんと優しくできたか? フローラはどうだった?」
ん?ん?とずいずい聞いてくる皇帝に動揺したユーリスは昨夜の潤んだ瞳のフローラを思い出し思わず口から出てしまった。
「かっ……」
「ん?か?」
「……かわいかった」
「ぶっ!くくくくっそうかそうか、かわいかったか!」
ぼそりと言った声はしっかり皇帝に聞こえていてやっと聞き出せたひと言に大いに笑った。
耳まで真っ赤にしたユーリスは恥ずかしくなってしゃがみ込み顔を隠し唸っていた。
そんなユーリスを見たのも初めてな皇帝はしばらくその手の話でからかい甲斐がありそうだとほくそ笑むのだった。

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