仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
そこには全身真っ黒で白い手袋をし、焼けただれた顔をした男が立っていた。
「「キャーっ!ゾッ、ゾンビだーっ!」」
悲鳴を上げたふたりはお互いを抱き締め合いその場にうずくまる。

グサッ……。
それには全身真っ黒の男がショックを受け言葉を失った。
「こらっ、あなたたち!そんなことを言ってはいけません!」
そこに現れたのは女神のように真っ白なワンピースを着た亜麻色の髪の女性。
「えー?だって今日はハロウィンだよ?」
女の子がスタっと立って怖がるのも楽しみのひとつだと文句を言った。
「それでもだめです。御覧なさい、お父さまはショックを受けて悲しそうなお顔をしているわ」
女神の女性は真っ黒の男の横に立つと困った顔をする彼の頬を慰めるように撫でた。
「どんな理由があろうと人の容姿をからかってはいけません。たとえ本気じゃなくても言われた方は傷つくのですよ?」
女神の女性こと、フローラに窘められ小さなふたりは反省し項垂れた。
「はい、ごめんなさいお母さま」
「ごめんなさあい」
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