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「ユーリスどうだ?フローラ嬢は」
「ええ、まあ……」
興味津々で聞いた皇帝は浮かない顔で返事をするユーリスにおや?と思わずスペンサー侯爵と顔を見合わせる。
上の空のユーリスはそんなふたりに気づかずふうっとため息をついた。

フローラがクッキーを焼いたあの日。
自分が図書館に行くついでにフローラを連れて行っただけなのに、それくらいでお礼をされるなど思いもよらなかったから最初は驚いた。
そのためにフローラは初めてクッキーを焼いたというのだからその気持ちだけでも嬉しいと素直に思う。
味はまあ……初めてなのだからしょうがない。
フローラは味見をしていないと言うから全部食べて証拠隠滅したつもりが、おせっかいなグレイのおかげでばれてしまった。
『わ、私手先が器用じゃなくて!お料理も才能がないみたいです!ごっごめんなさい!』
顔を真っ赤にしてアタフアと言い訳するフローラに謝る必要はないと言ったのだが。ほかにフォローする言葉を掛けられなかったせいか、なぜかその後は避けられ顔を合わせてもギクシャクした空気になりあまり会話もできないまま数日が過ぎた。