仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う

思惑の中のふたり

宮殿の東側には渡り廊下で繋がれている後宮がある。
昔は皇帝の妃や側妃が大勢いて栄華を誇っていたというが先の皇帝の代から妃はひとりのみで、今のジェイド皇帝の妃もマリーベル皇妃ただひとり。現在後宮には二人のお子様と家族で住んでいる私的居住区域だ。
「フローラ!待ってたわ!早く来て!」
「おはようございます、アリエラ皇女殿下。淑女の挨拶をもうお忘れですか?」
「あ!そうだったわ!おっほん」
元気に走ってきたアリエラ皇女は一人前に咳払いをしてピンと背筋を伸ばし、片足を後ろに下げ両手でドレスの裾を掴み軽く頭を下げ淑女の礼をかわいらしく行った。
「おはようございますフローラさま。今日もごきげんうるわしゅう」
「ご機嫌麗しゅう、アリエラ皇女殿下。よくできました」
「うふふっ、はやく!フローラあそびましょう」
フローラの手を取りはしゃぐアリエラは皇帝の第二子の皇女さま。
元気でおしゃまなアリエラ皇女は家庭教師として来たフローラが大好きだ。
家庭教師とはいってもお勉強はフローラの苦手分野であまり教えられるものはないのだが、母直伝の淑女教育は王族のものらしく優雅で気品があり、アリエラに立ち居振る舞いや淑女としてのたしなみを教えることになった。
< 96 / 202 >

この作品をシェア

pagetop