仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
自分の母アイリーンが隣国の王族の出身だということを知らなかったフローラは、そんな母がなぜ貧乏貴族の父の許へ嫁いだのか驚いて、どうやって出会ったのか興味津々。
『なんで教えてくれなかったのお父さま?』
『いやあ、はずかしいじゃないか。娘に私たち夫婦のなれそめを話すなど』
困ったように恥ずかしがるアーゲイド男爵に今度絶対口を割らせてやろうと思うフローラだった。
 
フローラの淑女教育は机に座ってやるような堅苦しいものではなく、庭へ出て花を愛でながら、お絵描きをしながらなど、五歳のアリエラには遊び感覚でできるので楽しいのだ。
「今日もよろしくね、フローラ」
「皇妃さま。ご機嫌麗しゅう」
マリーベル皇妃に挨拶していると待ちきれないアリエラはフローラの手を引っ張る。
「フローラったら!はやくってば、今日はお庭でおままごとするやくそくよ!」
「ふふ、かしこまりました」
今日はおままごとを通して食事マナーを教えることになっている。優しく微笑む皇妃に挨拶してアリエラとフローラは庭へと向かった。
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