誘惑の延長線上、君を囲う。
日下部君の家族
お盆の連休明け、強い陽射しでアスファルトに照り返しが来る中、最寄り駅から本社までの道のりを歩く。

とにかく暑い。一体、何度あるんだろう?そう思いながらも、もう少しの距離感が縮まらない。

「佐藤さん、おはようございます!」

「た、高橋さん。おはようございます!」

後ろからヒールの音をカツカツと鳴らして早歩きで会社へと向かって居るのは、バイヤーの高橋さん。

「休み明けはダルいですよね。毎日のようにビールを飲んでたんで、仕事したくないです」

「ビール好きなんですか?」

「えぇ、大が付くほど好きです」

高橋さんとは気が合いそうだ。早歩きだったのは、暑いので早く社内に入って涼みたかったらしい。出勤の時間帯が違うのか、高橋さんの旦那さんは一緒じゃなかった。高橋さんは私に歩幅を合わせながら、お盆休み中の話をしてくれた。お盆休み中は旦那さんの実家に行ったり、家飲みしたりしていたみたいだ。見た目は綺麗系なのに、居酒屋やビアガーデンが大好き人間な高橋さん。

「そう言えば……、日下部さんがお盆休み中に何をしていたか知ってます?常になら、誘えば家飲みに来るはずなのに、珍しく来なかったんですよ!」

高橋さんは私達の現在の関係性を知ってか、知らずか分からないが、そんな事を聞いてきた。
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