誘惑の延長線上、君を囲う。
私の顎に指をかけて、クイッと上を向かせた。日下部君の方に顔を向けたら、流し目で微笑まれた。ヤバイ、これはヤバイやつだ。ドキドキが止まらない。日下部君はお酒が入ると甘くなるから、私は常にキュン死に寸前で、所詮は流されてしまうのだ。

人気のお店なので予約の席は二時間までしかチャージ出来ない事になっていて良かった。時間内に食事を済ませ、予定通りに私が会計を済ませた。

「期間限定のショッピングモールキャンペーンをしておりまして、スクラッチクジが引けます。お客様は5枚引けますので、こちらからどうぞ」

帰り際に店員さんにスクラッチクジを引かせてもらって、指示に従ってコインで削る。

「おめでとうございます、系列のホテル宿泊施設利用券が当たりましたね!全体で3枚しか入っていないので凄いですよ!お帰りの際にサービスカウンターにて利用券と交換して行って下さいね!」

「ありがとうございます、嬉しいです」

私よりも店員さんのテンションの方が高かった。サービスカウンターに寄り利用券を受け取り、利用方法の説明を受けた。

「すっごい、系列ホテルのツイン宿泊利用券だって!わー、有名な高級ホテルじゃん!」

「良かったな」

「日下部君、一緒に行こう!」

「うん、喜んで」

ショッピングモールを出て駅まで歩いている途中、私は墓穴を掘った。嬉しさに舞い上がり、日下部君を誘ってしまった。

「またデートしような」

頭をグリグリと撫で回し、再び恋人同士の手繋ぎをされる。本当に今日は幸せな一日だった。ありがとう、日下部君───……
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