囚われて、逃げられない
嵌まる
それから数日後━━━━━━━

「データの流出?」
「うん…うちの企画とそっくりの企画が他社から発表されてさ。
おかしいんだよ……」
泰氏から資料を見せられて、野々花は驚愕する。

全く同じ内容のネットシステムが、他社で発表されて注目を受けていたからだ。

「でもこの資料、泰氏くんがだいぶ前から企画して作成してたよね?」
「そうだよ。結構、力入れて取り組んでたんだよ?
ここに転勤して、初めての大きな仕事だったから…」
落ち込む“フリ”をする、泰氏。

「泰氏くん…」
「でも、なんで情報が漏れたんだろう…」
「この資料…」
「ん?何?野々」
「あ、いや、そんなわけ……」
「野々?言って?」
「東生くんがね、見てたなぁって……」
「は?」
「あ、ほら!泰氏くんが外の仕事の時に、東生くんがうちの課に来てたの。
確か、今の企画の進み具合を見ておきたいって話してて……」
「アイツが?」
「あ、でもまさか、東生くんがそんなことするわけないし……」

そこへ東生がやってくる。
自然と注目を浴びる、東生。
「何?」
「東生くん」
「野々花?何?」
「泰氏くんの企画のことなんだけど…」
「あ、流出の?」
「なんで漏れたかはわかったの?」
「まだ調査中だよ?」
「前にここに来た時に、見てたよね?泰氏くんの資料」

「うん……ん?まさか、俺が他社に漏らしたっつてんの?」
「だって、この資料は社外秘だしこの課の人か、東生くんしか………」

「野々花、俺を疑ってんだ?
だったら、野々花だって怪しいじゃん!
光永と恋人同士なんだから!」
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