囚われて、逃げられない
奪われていく
「へぇー、今の言葉嬉しいな…
でも、勘違いしちゃう……」
頬杖をついて、今度は口唇をなぞった泰氏。
「え……あの…」
「キス…しちゃおうかな……?」
「泰氏…く…」
雰囲気が甘くなっていく……………


「失礼いたします!
光永様!お待たせして申し訳ありません!」
「だからぁ!」
「は?」
「君達揃って、タイミング悪いの!」
「え?あの…」
「はぁーまぁいいや……
オーナー、俺言ったよね?
今日は大切なデートだって!」
「はい、仰せつかってます」
「なのに、揃って良いとこ邪魔ばっかして!
じぃちゃんがこのレストランは良いって言ったから、デートに選んであげたんだよ?
いいんだよ?じぃちゃんに、ここは最悪なレストランだって報告しても」
「あ…それだけは、お止めください!
申し訳ありませんでした!」
「俺じゃなくて、野々に謝ってよ!」

「申し訳ありませんでした!」
「え?え?
そんな…頭を上げてください!
どうしよう…こんな……
あ!お料理!」
「え?」
「とっても美味しかったです!
このデザートも!
それに、景色も素敵だし!
だから、頭を上げてください!」

野々花はこれ以上空気が悪くならないように、とにかく必死だった。
そして何より、頭を下げることはあっても下げられることはなかった、野々花。
この事態にかなり困惑していた。

「そう言って頂けると、励みになります!ありがとうございます」
微笑む、オーナー。
「良かったぁ。泰氏くんも、私はほんとに大丈夫だから、デザート食べよう?
ね?」
野々花もオーナーに微笑み返し、泰氏に向き直った。
「………うん、そうだね。
だって?もう、下がっていいよ」

泰氏は複雑な気持ちで、野々花を見ていた。
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