Your PrincessⅡ
2.迎えに来たのは…
 その日はいつもと変わらない一日から始まった。
 起床して、朝食の準備をして。
 みんなと一緒に朝食を食べて。
 片づけをして。
 洗濯ものを洗って、干して…。
 掃除をしたかと思えば、すぐに昼食の準備をして・・・。
 この施設で一番若い1歳の坊やの面倒を交代でする。
 初めて赤ちゃんを抱っこしたときは、恐ろしくて手が震えた。
 初めての赤ちゃんは触ったら壊れてしまいそうだったから。

 坊やを抱っこしていると、この施設で先輩のレオさんに「慣れたわねー」と笑われる。
 レオさんは坊やの顔をのぞき込む。
「ここに来た時は抱っこするのが怖いって言っていたのに」
「さすがに…一年経てば慣れました」
 レオさんはこの施設出身で、園長が引退した後の跡取り候補として働いている。
 施設で働いているのは、私とライト先生、そしてレオさんと園長の4人だ。

 女性だけどサバサバした性格で、物怖じしない性格のレオさんは男の子たちから人気がある。
「そういえば、ライト先生は? 往診?」
「…さあ? 私は見てないですけど」
 眠った坊やをベッドにそっと寝かせる。
 レオさんは、じぃと至近距離で私の顔を見る。
「ほんと、似てないね。ライト先生と」
「…そうですか?」
 実際、血のつながりがないんだから、似てないのは当たり前だろう。
 とぼけたふりをする。
「あたしは、あの人の考えることがわかんないよ。美形なのに勿体ない」
「…私も、…妹の私ですら兄の考えていることがわかりません」
 うっすらと感じ取れるのは。
 レオさんはライト先生に気があるということ。
 暇さえあれば、ライト先生に対する質問攻めにあってしまう。
「掃除してきまーす」
 ボロが出る前に、レオさんから逃げ出す。
 ライト先生情報なんぞ、わかるわけがない。

 外に出て、箒片手に空を見上げた。
 モヤモヤとした気持ちはいつになったら晴れるのだろうか。
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