夢とりかえばやブックカフェ

わたしの朝

万葉の都。 早朝6時。

わたしが、
最愛の
夫としている店は
1時間後の
朝7時には open札が掛かる

珍しいブックカフェ。


着物に金銭をかける『着倒れ』、
飲食に金銭をかけるは
『食い倒れ』――。

対して『寝倒れ』は少し様子が
変わると言っていい。

何故なら

寝てばかりいると
身持ちを潰してしまう

『寝倒れ』。

道楽を揶揄する意味合いとは
ちょっと
違う。

実際、
睡眠時間ランキングは
2番目に短いとされるから
夕暮れ迫るとーー

街も人も寝静まる――。かに
店は閉まり
人通りは無くなる。

そんな、

世界遺産の寺の
旧境内を中心とする
観光や商業地域のなかに
わたし達夫婦の
ブックカフェは

ある。

繊細な格子窓。
まっ白い漆喰壁に虫籠窓が映える
町家で、

常連さんからは
外見とちがって
シンプルでレトロモダンな
インテリアが
黒塗りの壁に浮き彫りに
なって良いとお褒め頂く。

わたしの拘りは
カウンターの渋艶タイルと
鰻の寝床奥の窓。

柳の葉が垂れ下がる
長テーブル席の背後に設えた
棚には
夫が選んだ
至極の本が並んでいる。

黒天井の高い吹き抜け
ソファーの席は
永遠を感じると人気で
いつも誰かしら
常連さんが座ってもいる。

朝7時から夜の23時。

夫と入れ代わり

店に立つわたしは、

今日もキンとした透明な空気の
早朝6時から
店の前に

お鹿さんが 『おやすみ』して
いないか

確認しつつ、
掃き掃除をしていて。

こんな
わたしには神様とのヒミツが
ある。
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