私の婚約者には好きな人がいる
苛立ち

結局、兄が会社にきたことで、すぐに辞めると言い出せずにずるずると一週間が過ぎてしまった。
辞めてしまえば、恭士(きょうじ)お兄様は清永(きよなが)に嫌がらせをするかもしれない。
あの日、帰宅してからも恭士お兄様は清永には行くなと主張していた。
今日も不満そうに出勤する私を見送っていた。
私のことを思ってのことだろうけれど、恭士お兄様の過保護ぶりには本当に困ってしまう。
でも、あれから惟月(いつき)さんはちょっと優しくなった気がする。
気を利かせてくれているのか、閑井(しずい)さんはコピーした書類の中で惟月さんに持っていくものは私に任せてくれるのだけど、また惟月さんと中井さんが二人でいるところに遭遇したら、どうしようと思っていた。
今のところは一度もないけれど。
専務の部屋のドアをノックすると、惟月さんがいた。

「午後からの会議資料をお持ちしました」
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