仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
プロローグ



なんで?
なんで私、押し倒されてるの?

私を組み敷いているのは、今日の昼間、婚姻届けを一緒に書いたばかりの婚約者。
明日、区役所に婚姻届けを受理してもらったら、晴れて夫となる男。
だから、お風呂上がりに抱きかかえられて、キングサイズのベッドに押し倒されていても、文句は言えない間柄ではある。

だけどね、違うのよ。
話が違うの。

「希帆(きほ)」

私の夫になる男が眼前に顔を近づけた。誰が見ても純度百パーセントのイケメンフェイスから放たれる笑顔の暴力。

「ねえ、希帆、俺と赤ちゃん作ろう」

明日にも夫になる男・左門風雅(さもんふうが)は大きな口を開けて笑った。まるで捕食せんばかりの凶暴な表情で。

「赤ちゃんできたら、希帆はずーっと俺と一緒だね。仮面夫婦とか言ってられないよね」

左門風雅、あなたは私をただの同級生として見ていたはず。
長年、海外に行ったきりの私を放置していても平気だったはず。
結婚だって、形ばかりのものだったはず。

それがどうして初夜に豹変してるのよ!
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