溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~

【雅己side】


「本日は十時より今月の売上報告会が予定されております。終了次第、来月目標に向けての打ち合わせが―――」

高いが落ち着いた声がさらさらと流れていく。

鈴の音のような、という表現が相応しい彼女の声を聞いていると、分刻みの過密スケジュールの煩わしさも和らぐような気がする。

スケジュールを読み上げながら、細い指先でiPadを軽やかにタップする。
今はすっかりシステムを使いこなしているようだった。
最初は立ち上げもままならなかったそうだが、一生懸命に練習してIT端末の操作も慣れてきたのだろう。

ようやく俺の熱視線に気付いたのか、はたと顔を上げて芽衣子が俺を見つめてきた。
頬杖をついてぼうとしている俺に綺麗な黒目を丸くさせているのが、堪らなく可愛い。

「あの…どうされました?」
「いや、綺麗だなぁと思って」
「え…」
「芽衣子君に見惚れていただけだよ」

慣れた女はここで艶のある言葉を返してくるが、芽衣子は口籠って顔を赤らめてばかりいる。
その初心さと素朴さが俺には堪らなく新鮮で可愛くて、余計に愛おしくなる。

そして、少しいじめたくなる。
< 107 / 232 >

この作品をシェア

pagetop