毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
「お父様の頼みたいことって……お母様の妖精植物がどうかしたの?」
「話が早くて助かる。庭師の話によると、どうやら温室の〝フィーリア・ウィーティス〟の開花が今年になりそうらしい。その世話を頼みたいんだが」
「すごい! 予定より一年早まるなんて!」

 私は目を輝かせてお父様に駆け寄る。

「ああ、そうだな。きっとティアベルが毎年頑張って世話をしていたからだろう。〝フィーリア・ウィーティス〟は彼女が特に気にかけていた妖精植物だ。頼んだぞ」
「はい」

 お父様は『妖精植物事典』を私に手渡すと、また仕事へ戻っていった。

「お嬢様。あの、〝フィーリア・ウィーティス〟とは?」

 そばに控えていたアルトバロンが狼耳をぴょこりとする。
 私はアルトバロンの横に並んでからフィー・エルドラードの『妖精植物事典』を開いて、〝フィーリア・ウィーティス〟の項目をアルトバロンへ見せる。
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