毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
 銀灰色の長髪を一本の太い三つ編みにまとめた可愛い髪型をしているのに、色気のある切れ長の目元といつも眉間にシワを寄せているせいで、誰にも微笑んでいるようには見えないようだが、これは貴重な微笑み顔だった。

 そんな『冥府の死神』と揶揄されるお父様の影響か、社交界ではいたいけな幼女の私まで『毒林檎令嬢』と呼ばれ恐れられているらしい。

 お父様譲りの白銀の柔らかな髪と、透き通った紅玉の瞳。お母様譲りの可憐な面立ちに、日焼け対策に日々奮闘中の白磁の肌、そして真っ赤な林檎色の小さな唇。
 どこをどう見たって、美形なお父様と美人なお母様の遺伝子を受け継いでいるのに……いや、二人の遺伝子を受け継いでしまったからか、白雪姫の童話に出てくる悪役魔女になぞらえて『ディートグリム公爵家の毒林檎令嬢』と、なんだか危険物扱いされているみたいなのだ。

 まったく! 誰が言い出しっぺかは知らないけれど、私の髪は白銀であって、あの林檎売りの老婆のような白髪(しらが)ではない。
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