転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

12.子猫のミア

 スーリアの自宅は小高い丘の上にある。あたり一帯は父の管理する農園で、色々な作物が植えられている。
 スーリアは朝早くから摘んだ切り花を台車に乗せると、それを押しながら丘を下っていった。五分も歩けば道の両脇には商店が広がり始め、ちょうど十分ほど歩いたところで目的の建物の赤い屋根が見えてきた。風見鶏が屋根の上でクルクルと回っている。

「おはようございます」
「おはよう、リアちゃん」

 鈴のついた扉をカランコロンと鳴らしながら開けると、女将さんは焼き上がったばかりのパンを商品棚に並べ始めていた。三角巾を頭に巻いた女将さんはスーリアを見上げてにこりと微笑んだ。パンのいい匂いがふわりと鼻腔をくすぐる。

「よう、リア」
「おはよう、リジュ」

 スーリアが来たことに気付いた幼なじみのリジェルが奥からひょこりと顔を出した。リジェルは茶色い癖毛を一つにまとめて白いコック帽を被っている。パンの準備をしていたようだ。
< 97 / 386 >

この作品をシェア

pagetop