青い夏の、わすれもの。
青い夏、泳ぎ出す。

爽side

澪の吹奏楽コンクールは悲惨な結果に終わった。

今年初めて同じクラスになったけど1度も話したことのない大楽律という男子が、ある意味会場の全てをさらっていった。

トランペット担当で吹奏楽部の絶対的エースの大楽くんが最後の最後でまさかの重大ミスを犯したのだ。

それは音楽初心者で音痴のあたしでも分かるミスだった。

メロディの途中で音が消えた。

その瞬間、あたしの背筋も凍った。

隣にいた澪はもっと衝撃を受けていたに違いない。

それに、澪は彼から演奏の手解きも受けていて結構親しくしていた。

師弟のようであり、どこか熟年夫婦感のある2人を密かにわたしはお似合いだと思っていた。

なんなら、澪と風くんよりも。

澪に風くんが来るって言っていたけど、実は風くんはあの場にいなかった。

ならば、どこにいたのかというと、彼は悠長にも迷子の母親捜しを手伝っていたらしい。

"ごめん"というスタンプの下に"今この子のお母さんを捜していてそっちに行けなくなったんだ。澪ちゃんに謝っておいて"という
言葉と証拠写真が送られてきた。

あたしは呆れて言葉も出なかった。

そりゃあねぇ、迷子を見つけちゃったら放っておけないのも分からないこともないよ。

けど、友達以上恋人未満の関係の女の子の最後の晴れ舞台をすっぽかすってどういうこと?

あたしがそんなことされたら、いくら今まで大好きだったとしても、嫌いになるわ。

優しい人が良いっていっても、さすがにこれはお人好し過ぎ。

ってか、天秤にかけた時、澪の方が大事じゃなかったってことだよね?

いや、有り得ないから。

澪がどれだけ想ってるか分かってるの?

きっと分かってたらこんなことしないよね?

澪のこと軽視し過ぎでしょ。

なんか...酷いや。

あたし、無理だわ。

澪には悪いから、あたしのこの感情も風くんが来てなかったってことも言わないでおくけど、あたしは許せない。

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