劇薬博士の溺愛処方

* 5 * 劇薬という名の愛の処方箋




 薬剤師国家試験でよく出るのが「劇薬と毒薬の違い」についての問題だ。「薬」と記されているだけあって、どちらも医療用としてふつうに薬局で取り扱っているが、鍵のついた場所にしまわれるのが毒薬で、鍵のついていない場所でほかの医薬品と区別すれば保管できるのが劇薬である、ということはあまり知られていない。
 そもそも毒薬と劇薬では薬の危険性が異なり、半数致死量と呼ばれる指標によって基準が定められている。毒薬の半数致死量と劇薬の半数致死量には十倍の差があるのだ。

「まぁ、半致死量の基準以外に毒薬認定されるもののなかには例外的に飲みすぎて致死量に至ったり、中毒性のあるものもあります。そう考えると劇薬ってかわいいものでしょう?」
「かわいい。ねぇ……」

 毒薬ほど危険性はないけれど、毒薬に次いで激しい薬理作用を持つ劇薬。
 過量に使用すると危険性が伴うが、使い方を間違えなければ素晴らしい薬効を持つ。

「琉先生、劇薬みたいです」
「俺が劇薬だって?」
「うん」

 過剰に愛されると苦しいし、取り扱いに注意は必要だけど、厳重に鍵をかけて束縛するほどではない。
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