白衣とブラックチョコレート

ジェラシー……?

「ほんっとに何考えてんだろあの先生っ……」

憤慨しながら処置室へ包交車を取りに行く途中、ステーションを通りかかると中から恭平が飛び出してきて雛子の手を掴む。

「……っ良かった、河西さんの包交これからだなっ?」

「は、はい、どうかしましたか?」

恭平は僅かにほっとしたような顔を見せ、立ち止まった雛子の代わりに処置室へ向かう。

「包交は俺が着く。お前には別に頼みたいことがあるから、ちょっとステーションで待ってろ」

「は? え、ちょっと!」

恭平は処置室から包交車を出してくると、有無を言わさず長い足で大股に河西の部屋へと行ってしまう。

「な、なんで……?」

首を傾げながら言われた通りステーションに入ると、原と水嶋が揃ってニヤニヤと雛子を見やる。

「なあに〜あなた達、そういう関係だったのぉ〜?」

「え? それはどういう……」

「だ〜か〜らぁ〜」

言葉の意味が分からず、雛子は眉を顰める。

「あれはどう見ても……ねぇ?」

「ジェラシーよ……ねぇ?」

「ジェラシー……あっ!」

相変わらず二年目の二人は顔を見合わせニヤニヤしており、ジェラシーという言葉に暫し思案していた雛子はとある可能性を思い付き両手で頬を押える。

「そっか……桜井さん、河西さんみたいな儚げな女性、タイプそうですもんね……何となく真理亜さんにも雰囲気が似ているような……」

なるほど、と思う反面、恭平に意中の女性がいるのかと思うと何だかモヤモヤしてしまう。

「いやでも……河西さん、恋人を亡くしたばかりでそこに付け入るような真似はどうかと……」

「ダメだこりゃ」

ブツブツと何か呟きながら落ち込んでいる様子の雛子に、原と水嶋は目を見合わせ肩を竦めた。



その時、リーダーの持つPHSがけたたましく鳴り響く。雛子は何故か、その音に不吉な予感を覚えた。









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