【溺愛結婚】懐妊後、御曹司から猛烈に溺愛されています。〈完結〉
【1.高城藍】


 そして夕月園を離れておよそ半年後のことだった。

「いらっしゃいませ」

 わたしは京都のとあるカフェで働いていた。
 夕月園を離れて半年。夕月園の全従業員が退職した。わたしも夕月園を退職し、そのままカフェで働き出したのだった。
 
「お客様、お一人ですか?」

 と声をかけたその背の高い男性に、わたしはなんとなく見覚えがあった気がした。
 あれ……?この人……って。

「藤野透子、だな?」
 
 わたしの顔を見るなり、そう告げてきたその男性。

「……なぜ、わたしのことを?」

「君に話がある」

 突然そう告げられたわたしは、不思議に思った。あなた、誰ですか……?と。

「……ここはカフェです。何も注文なさらないのなら、申し訳ありませんがお帰りください」

 わたしはその男性にそう告げた。だけどその男性は「では、アイスコーヒーを貰おう」と言った。

「……かしこまりました」

 わたしはアイスコーヒーの注文を取り、カウンターに注文表を置いた。
 アイスコーヒーを用意したわたしは、その男性の前に「お待たせ致しました。アイスコーヒーです。お好みでミルクと砂糖をどうぞ」とテーブルに置いた。
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