今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
3-1
年が明けた。あたしは一泊の予定で実家に帰省した。毎年のことで、叶にもそうするよう言われたからだ。

駅まで送ってくれた叶の笑顔に後を引く思いで、それでも帰れば家族の温かさにホッとしてしまうのだけれど。
 
『すーちゃん、ナンかキレイになった~。彼氏おるんでしょ』

末妹で今年が成人式の紗菜(さな)にからかわれて思わず赤面とか、姉の威厳もへったくりもない。もっと泊まっていけばいいのに、と残念がる家族に見送られ、翌日の夕方には新幹線の中。

ほんの一日、叶と離れていただけなのに。気が急いて会いたくて、早く彼の腕に包まれたくて。車窓越しに流れてく夜景も、ただ過ぎゆくだけで。

そう言えば家族に仕事を辞めたことを話しそびれた。子供が五人なだけあって、両親は細かいことは気にしない。元気でいるのが判れば変に心配されることもないだろう。今まで通りたまにメッセージを送ったり、普通にしていればきっと大丈夫。シートに体を沈めあたしは瞑目する。

何も変わらないよ、と淡く笑んだ叶を思い返す。あのクリスマスの朝の。

『スズには僕を手伝ってもらうことになる。別で手当も出すし、時間外労働で悪いけど』

どんな、と視線を傾げて見せたあたし。

『スズにしかできないことだよ。僕が愛した君だから・・・できること』

謎かけみたいに、叶はそれ以上のことは教えてくれなかった。いずれまた時雨を会わせるから、と最後に言い、それまでは忘れていなさいとも。

時雨を。・・・の意味に惑ったのも確かだ。でも叶は意味のないことはしない。信じて今は蓋をするだけ。 
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