今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
4-1
「お母さん?・・・うん元気。あのね、仕事変わったの。それで引っ越したからあとで住所送る。・・・うん大丈夫、お正月にはまた帰るし。ん、・・・じゃあね」

もうあとふた月で今年も終わり。と言う頃、あたしは実家に電話を入れた。叶と一緒に暮らし始めて一年。ひと区切りっていう気持ちもあった。

「元気そうだった?」

叶の微笑みに小さく笑み返し。

「変わりないみたい」

「そう。じゃあ今度のお正月は、僕もスズのご両親に挨拶に行こうか」

思わず目を丸くする。だって、あの。挨拶って、それって。
すると叶は、クスクスと本当に可笑しそうにあたしを見やった。 

「世間的にはスズも年頃だし、ご両親を安心させてあげないとね」

「・・・っ、でも・・・!」

あたしの戸惑いがどこに在るかを叶は解っていただろうか。・・・亡くなった奥さん。人形堂の秘密。時雨。走馬灯のようにクルクル回る。

腰を抱き寄せられ、一人掛けのソファに座っている彼の膝の上に摑まった。

「厭?」

悪戯っぽい笑顔がすぐそこにある。イヤな筈がない。ない、けど。
 
「叶は・・・いいの?」

その一言に尽きた。 
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